サービス産業での優良企業・団体の取り組みはこれまで書籍やセミナーなどで多数紹介されてきたが、座学だけで、その神髄を理解するのは難しい。サービス産業生産性協議会の「大人の武者修行」は、優良企業・団体の現場を「道場」とし、働きながらサービスの極意を学ぶ社会人インターンシップ。研修費などの3分の2を補助してくれるため、人材育成を考える観光系の企業・団体にとって活用しやすい研修制度だ。
津市NPOサポートセンター(三重県津市)が手掛ける「みえご縁市場」は、津市をはじめ三重県内に埋もれた地域商品の開拓や開発を目的とする地域商社のプロジェクト。都市部で開催される商談会や展示会への参加や通販サイトを活用した情報発信などで魅力あふれる三重の商品を紹介し、生産者を支援している。
大人の武者修行ではみえご縁市場での修行も可能で、(1)地域産品の発掘方法(2)地域産品を扱うさまざまな事業者との付き合い方―などを学び取れる。地域コーディネーターとして「地域の生産者と消費者をつなげたい」という強い思いのあった福島睦子さんも、今年1月から2月にかけて11日間、ここで修行。地域コーディネーターのスキルアップを目指した。
指導したのは、津市NPOサポートセンターの高垣和郎理事。南伊勢や伊賀、尾鷲、紀伊田辺のミカン農家や日本酒醸造会社など、みえご縁市場の関係先を訪れる際に、福島さんを連れて行き、現場を見せた。
高垣理事は「5年前であれば『三重の特産』と説明するだけでモノが売れたが、現在は使い方の提案が求められる」とマーケットの変化を読んでいる。修行に励む福島さんに「モノづくりをする人の思いをもっと深く知ってほしい。特産品を売ろうとするなら、モノづくりをする人に成り代わって提案ができるくらいにならなければならない」とアドバイスを送った。
みえご縁市場での修行で福島さんは「生産者の思いが消費者に伝わる、また消費者のニーズが生産者に伝わる、架け橋となることが大切だと知った」と語る。
福島さんは現在、地域のグルメやイベントなどを女性目線から提案する情報サイト「旨美」を立ち上げて自立。和歌山県・温川地域の活性化を目指す「グリーンスペース温川プロジェクト」に共鳴し、温川の無農薬商品を同サイトで取り扱うなど、「地域の生産者と消費者をつなぐ」という役割を果たすために日々各地の生産者の元を訪れている。